妊活・妊娠中に大切な栄養素を知っていますか?分子栄養学で自分にあった食生活を学ぼう|妊娠しやすい身体を作る④栄養編

こんにちは。鍼灸サロンamica.の院長、横澤です。

妊娠しやすい身体作りに心がけたいことや、自宅でできるセルフケアを紹介しています。

今回のテーマは、栄養です。

「バランスの良い食事をとりましょう」と言われますが、実際のところ「バランスの良い食事ってなんだろう?」と悩みますよね。自分はしっかりと食べていると思っていても、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの体に必要な栄養素が摂れているかどうかはわかりづらいものです。

栄養は、妊娠や育児だけでなく、ご自身が健康的に過ごすためにも大切です。
ぜひ、栄養のことを知ってみませんか。

このブログでは、次の2つのことがわかります。

  • ・妊活・妊娠中に必要な栄養素
  • ・栄養不足をケアする分子栄養学の話

どうぞ、ゆっくり読んでみてくださいね。

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<妊娠しやすい身体を作ろうの過去記事をリンク>
妊娠しやすい身体を作る①体重編
妊娠しやすい身体を作る②睡眠編
妊娠しやすい身体を作る③運動編

妊活には、コレステロールも大切です

「妊活・妊娠中は太りすぎないように」と言われることがありますよね。

そこで、カロリーを制限したり、糖質制限や野菜中心の食生活を心がけている方もいると思います。でも、なんとなく「健康に良さそう」「太らなそう」という食生活の中には、妊娠するために必要な栄養が不足してしまう場合があります。

たとえば、コレステロールです。

コレステロールと聞くと、「善玉コレステロール(HDL)」「悪玉コレステロール(LDL)」という単語から、高血圧や心疾患の原因となりうる「悪者」というイメージが浮かびます……。

しかし、コレステロールは悪者ではありません。

コレステロールは、ヒトの体を作っている細胞の膜、性ホルモン、副腎皮質ホルモン、脂質の消化吸収を助ける胆汁酸の材料になります。また、髪の毛や皮フをなめらかにもしてくれるので、とっても大切な役割を持っているのです。

そのため、「太ることは妊娠によくない」と思い込み、自己判断でヘルシーと思い込んだ食生活を送るのは、逆効果になってしまう場合があります。反対に「この栄養素が妊娠に大切だから」とそれだけを積極的に摂取することもおすすめしません。

大切なことは、「自分に何の栄養素が足りていないか?」を正しく知り、からだのなかにある分子(栄養素)を最適な量を用いて、個々の細胞の働きを向上させるために足りていない栄養素を補うことです。この考え方を、分子栄養学といいます。

自分に足りない栄養を知る。分子栄養学と栄養療法

分子栄養学を、もう少しくわしくお話しましょう。

分子栄養学に基づく栄養療法では、血液検査などによって1人ひとりに足りない栄養素を調べ、適切な栄養素を摂取し、細胞レベルから健やかな身体を維持していきます。

元気な女性
健康女子!

みなさんは、おそらく感覚的に、「カルシウムを採らないとなぁ」とか「ビタミンは大事だね」という理解はされていると思います。しかし、ビタミンだけでも13種類あります。またビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分かれ、体内に蓄積されやすい脂溶性ビタミンの摂り過ぎは注意が必要です。

このように、栄養は奥深いものであり、正しい知識を持って摂取することで、栄養が持つ本来の役割を果たします。分子栄養学を用いた妊活では、足りない栄養素を科学的に調べて、日々の食生活に役立てていきます。

分子栄養学による栄養療法を取り入れている不妊クリニックは増えてきていますので、お近くにないか調べてみてはいかがでしょうか。

鍼灸サロンamica.では、分子栄養学に基づく食生活のアドバイスをしています。どこで血液検査をしたらよいの?など、基本的なことからサポートします。お気軽にご相談ください。(鍼灸サロンamica.では、血液検査は行っていません)

妊活に重要な栄養素は4つ(葉酸・ビタミンD・亜鉛・鉄)

ここからは、妊活や健やかな妊娠の継続に大切な4つの栄養素についてお話していきます。

その栄養素とは、葉酸、ビタミンD、亜鉛、鉄です。

なぜ大切なのか?どんな役割があるのか?を理解すると、バランスの良い食生活を考えることが、楽しくなりますよ。

栄養素①妊活中・妊娠初期に欠かせない栄養素・葉酸とは

葉酸は、植物の葉っぱや果物などに多く含まれるビタミンB群の水溶性ビタミンです。葉酸は、細胞の分裂や成熟に大きく関わっています。とくに、次のような役割を持ちます。

  • ビタミンB12と一緒に、赤血球の生産を助ける
  • 細胞を生産や再生(体の発育)を助けるに
  • DNAとかRANなどの核酸やタンパク質の生合成を促進(代謝の向上)

2000年から、厚生労働省は妊娠の可能性がある女性に対して、葉酸の摂取を推奨しています。それは、妊娠前後における葉酸摂取で胎児の神経管閉鎖障害(NTDs: neural tube defects )の発症リスクが軽減するという報告があるからです。

とくに、妊娠前・妊娠初期(妊娠1ヶ月以上前〜妊娠3ヶ月)は胎児の細胞増殖が盛んです。この時期には、葉酸が不足しないように心がけたいですね。

妊娠中期・後期は、貧血の予防のために葉酸の摂取を心がけましょう。また、動脈硬化を予防する葉酸は、妊娠高血圧も防ぎますよ。

また、男性の妊活にも葉酸が役立つ可能性があるという研究があります。葉酸の積極的な摂取が、精子の染色体異常に良い影響を及ぼす可能性が示唆されているそうです。

妊活中の葉酸の必要量

日本人の食事摂取基準(2020年版/厚生労働省)によると、葉酸の1日の摂取の推奨量は18歳以上の男女ともに240μgとなっています。

では、妊活・妊娠中の葉酸の必要量を見ていきましょう。

妊活中・妊娠初期

妊活中・妊娠初期では、神経管閉鎖症発症の予防のため、標準の推奨量(240μg)+400μg/日が推奨されています。バランスの良い食事だけでなく、サプリメントで補っても問題ありません。

妊娠中

妊娠時(中期及び後期)は、「葉酸の分解や排泄が促進される」という報告があるため、標準の推奨量の+240μg/日の追加摂取が推奨されています(合計480μg/日)。

産後〜授乳期

授乳中は、母乳を通して赤ちゃんにも葉酸をしっかり与える必要があります。標準の推奨量に対し、+100μg/日が理想です(合計340μg/日)。

参考:e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

葉酸はサプリメントを上手に取り入れよう

葉酸は、海藻類や野菜、柑橘類などの果物といった植物性食品と、レバーなどの動物性食品に多く含まれています。とくに葉酸を積極的に取り入れたい妊活中・妊娠初期は、いつもの食事とサプリメントの併用がおすすめです

もちろん、妊娠中期以降も葉酸は大切ですし、サプリメントを続けても構いません。しかし、食品以外からの葉酸の過剰摂取によって、健康を損ねたという報告もありますので、摂りすぎには気をつけたいです。

といっても、食事のたびに葉酸の量を計算して確認しましょう、という話ではありませんので、心配しないでくださいね。毎日のようにファストフードを食べ、葉酸のサプリメントで補う、というようなことは避けましょうというお話です。

葉酸を含む食材は次の通りです。この他にも、葉酸と言えばブロッコリーが有名です。

納豆だけみても、1パック(50グラム)で葉酸が約60μg含まれています。ほうれん草やブロッコリーは、買ってきてすぐに茹で、タッパーに入れて冷蔵しておくと、小腹が空いたときに食べられます。また、冷凍しておくと、料理に便利です。

レバーのうち、葉酸が最も多いのは鳥レバーです。ただし、鳥レバーはビタミンAも多く含まれます。ビタミンAも妊活・妊娠中の身体作りに重要なビタミンですが、妊娠初期に摂りすぎると、胎児の発育に影響が出る可能性があると言われています。

ナーバスになることはありません。毎日鳥レバーを食べ続ける…というような極端な食事にならなければ、問題はないでしょう。

栄養素②質の良い卵子を作る、すごい栄養素ビタミンD

ビタミンDは、カルシウムのバランスや骨の健康の維持に関わる大切な栄養素です。ここ20年で研究が進み、次のような役割を持つことが分かっています。

  • 免疫力アップ効果
  • 抗ガン作用
  • 感染症予防
  • 糖尿病予防
  • 血圧コントロール
  • 自己免疫疾患を予防
  • うつ病を予防

ビタミンD、すごい栄養素です!

さらにビタミンDは、質の良い卵子を作り、受精卵を子宮に着床させやすくする作用(子宮内膜の環境を整える)があると言われ、産婦人科領域で注目されています。男性の妊娠力も高めると言われています。

ビタミンDは食事と日光浴で摂取しよう

食事摂取基準によると、ビタミンDの成人の摂取目安量は8.5μg(340IU)、上限は100μg(4000IU)です。この摂取目安量は、ビタミンDの摂取不足による「くる病」を防ぐ目的のため、妊活・妊娠中であれば1日50μg(2000IU)を目安にしましょう。

ビタミンDの豊富な食べものは、次の通りです。野菜など、その他の栄養素を持つ食品と組み合わせて食べるのがおすすめです。

食材数量ビタミンD
干しシイタケ2個(約6g)0.8μg(32IU)
キクラゲ2個(約2g)1.7μg(68IU)
シラス干し大さじ2(約10g)6.1μg(244IU)
イワシ2尾(約110g)35.2μg(1408IU)
紅鮭一切れ(約80g)25.6μg(1024IU)
あん肝(生)60g66μg(2640IU)
妊活で注目栄養素ービタミンD
ビタミンDを多く含む食品

なお、ビタミンDの中には、食品には含まれない種類も存在します。

そこで必要なのは、日光浴です。関東地方(筑波)では、摂取目安量の8.5μgのビタミンDを生成するのに7月の12時で5分ほど、12月の12時で25分以上ほどの日光浴が必要です。夏は日射病や日焼けには気をつけて、運動がてらのお散歩にも出かけてみましょう。

参考|体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 -札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.htm

栄養素③妊活・妊娠中に重要なミネラル・亜鉛

亜鉛はビタミンではなく、ミネラルと呼ばれる栄養素です。ミネラルは、私たちの身体に微量に存在する栄養素で、仲間に「ナトリウム」「カリウム」「カルシウム」「マグネシウム」「リン」「鉄」「亜鉛」などがあります。

亜鉛は、細胞分裂を促します。受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら着床し、赤ちゃんになっていきますから、亜鉛は妊活・妊娠にとって重要や役割を持っているんですね。

亜鉛の必要量

では、亜鉛はどのくらい摂るとよいのでしょうか。

厚生労働省による1日あたりの摂取目安量は、成人で1日3〜15mg(上限:30mg)で、推奨摂取量は、成人女性で約8mg(妊婦中・授乳中は+ 3〜4mg)とされています。

参考: https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/12.html

亜鉛は、肉・魚介・種実・穀類など多くの食品に含まれています。とくに亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、豚レバー、牛肉、卵、チーズ、切り干し大根、カシューナッツなどです。

亜鉛は「サプリメント」の活用も効果的です。カプセル状や液体のものまで、さまざまなサプリメントがあります。飲みやすいほうを選んでみてください。

チョコレートとお酒には気をつけて

亜鉛を摂るうえで、気をつけてほしい食品が2つあります。

1つ目は、チョコレートです。

チョコレートやココアの原材料であるカカオには、銅が多く含まれています。銅も、身体を作る大切なミネラルですが、亜鉛と銅のバランスが悪いと、着床障害の恐れがあると言われています。一般的に、亜鉛の摂取量のほうが少なくなりがちなため、銅が多く含まれる食品を控えると、2つのミネラルのバランスが保たれやすいでしょう。

2つ目は、お酒です。

妊娠中はもちろん禁酒ですが、妊活中も飲酒は控えたほうが良さそうです。とくにアルコールの代謝に関わる酵素は、亜鉛を材料としています。お酒を飲むことで体内の亜鉛が使用されるだけでなく、アルコールは尿の中に亜鉛を排泄することを促してしまうそうです。

お酒が好きな人にとってはツラい情報ですが、今はさまざまなノンアルコール飲料が発売されています。カロリーを抑えた商品も多いので、お気に入りのドリンクを探してみましょう。

栄養素④ミトコンドリアのエネルギーを生む栄養素・鉄

鉄も、亜鉛と同じミネラルの1種です。

「鉄分が不足していると、貧血になりやすい」という話を、1度は耳にしたことがあると思います。鉄は、赤血球にあるヘモグロビンと手を取り合い、身体中に酸素を運んでいます。鉄分が少ないと酸素が行き届かないため、貧血につながってしまうんですね。

鉄は、妊活にとっても、重要な栄養素です。

細胞には、ミトコンドリアというエネルギーを生む器官があります。とくに卵子は、他の細胞以上にミトコンドリアを持っていて、ミトコンドリアが作り出すエネルギーを使って、「卵子成熟→受精→胚発育→着床→胎児成長」と変化していきます。

鉄分は、ミトコンドリアがエネルギーを生むときの重要な栄養素です。ミトコンドリアが豊富、つまりよく働いてエネルギーを生み出している子宮頸管内膜上皮からは、頸管粘膜の分泌が増加し、精子が子宮へ侵入しやすくなります。

また、タンパク質のコラーゲンを作るときも、鉄分(とビタミンC)が必要です。

美容イメージのあるコラーゲンですが、コラーゲンが豊富にあると、受精卵が着床しやすく、胎盤形成しやすい上質な子宮内膜を作ることができると言われています。

かくれ貧血を見つけるには、フェリチンを調べよう

厚生労働省の国民健康栄養調査によると、多くの人が鉄不足だと言います。推奨されている鉄の摂取量と実際に摂取している量を比較したとき、必要量の6割ほどしか摂取できていないそうです。

また、気をつけたいのは「かくれ貧血」です。

体内に蓄えられる鉄には2種類あり、ヘモグロビン(血液の成分である赤血球に含まれるタンパク質)とフェリチン(貯蔵鉄)といいます。かくれ貧血とは、フェリチンが足りない状態をいいます。

実は毎月の月経で、女性はフェリチンを消費しています。しかし、一般的な健康診断はヘモグロビンの数値をチェックするため、フェリチンの数値がわかりません。そのため、ヘモグロビンは足りているのに貧血が起きてしまう、「かくれ貧血」が起きる場合があります。

次のチェックシートを使って、「鉄不足かどうか?」をセルフチェックしてみましょう。チェックの項目が多いときは、クリニックで詳細な血液検査によるフェリチン量の確認をおすすめします。

鉄の吸収率をアップするビタミンC

鉄が多く含まれる食材には、赤身の肉、カツオ、レバー、貝類があります。また、がんもどきやココア、豆乳、茹でた小松菜にも含まれています。

調理器具もポイントです。南部鉄器、鉄玉子、スキレットのように、鉄からできた調理用具を使って調理をすると、鉄が摂取できますよ。

例:やかんに鉄玉子を入れて沸かしたお湯で、麦茶やお味噌汁を作る

(注意したいこと:コーヒーや緑茶に含まれる「タンニン」という成分は、鉄の吸収を抑えてしまいます。食事の時はお水や麦茶など、タンニンの含まれていない飲み物を選びましょう)

さらに鉄は、ビタミンCと一緒に摂取することで、吸収率が上がります。お肉やお魚、貝類などにレモン汁をかけて食べると、手軽です。また、ビタミンCたっぷりのブロッコリーやパプリカなどを付け合わせにすると、栄養価が高いだけでなく見た目も華やかになりますね。

貧血がひんぱんに起きていたり、血液検査で鉄分の量が好ましくないときは、鉄剤の力を借りましょう。鉄剤は、必ずお医者さんに相談し、処方してもらいます。市販の鉄剤もありますが、自分の判断で飲むのではなく、お医者さんや薬剤師からの指示を受けてくださいね。

心配しすぎず、バランスの良い食事をとりましょう

妊活・妊娠に役立つ栄養のお話をしてきました。

もしかしたら、「これを食べよう」「これは食べ過ぎないように」とプレッシャーを感じてしまったかもしれません。でも、そんなに心配しすぎることはありません。

自分に足りない栄養素は積極的に摂りながら、バランスの良い食事を目指せば大丈夫です。たまにファストフードやお菓子を食べても構いませんし、何品も作るなど、凝った食事でなければいけないわけでもありません。

栄養バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事

食事は一生付き合っていくもの。妊活や妊娠をきっかけに、「自分にとってバランスの良い食事は何か?」を考えてみませんか。

鍼灸サロンamica.では、1人ひとりに合った食生活のアドバイスをしています。
どうぞお気軽にご相談ください。

今回のブログは、下記を参考にしています。

・新百合ヶ丘総合病院消化器内科/予防医学センターの袴田先生(臨床分子栄養学研究会認定医)「「分子栄養学」で日本の少子化を変える!」の勉強会

・「卵子の老化に負けない妊娠体質に変わる栄養セラピー」(著:古賀文敏・定真理子/青春出版社)

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